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WWWのCG分野での利用
ネットワークコンテンツで拡がるCG教育
VRML, Java等の普及にも伴い、ネットワークコンテンツの拡がりは目も見張るものがある。
こうした時代背景に伴いCGの研究・教育のあり方も変化しつつある。そこで、
CG研究、教育に携わるものとして、WWWとCGの関わりをWeb上で調査した。
ここでは、CGに携わる研究者、教育者、および学生にとってのWWWホームページの有用性について検討してみたい。
WWW利用のメリット
- 各大学でのCG教育のカリキュラムや教材を知ることができる。また、遠隔教育・遠隔学習が実現できる。
- 各研究機関でのメンバー構成、最新の研究動向を知ることができる。
- フリーソフトやフリーのデータを入手できる。
- 各研究機関における作品のギャラリを楽しめる。
- 学会の開催日程、プログラム、申し込み、会場地図の情報を入手可能である。
- 研究者、アーティスト等の業績や経歴(キャリア)を知ることができる。
CG教育に関する情報
SIGGRAPHの教育分科会ではCGコースを保有する世界中の大学の一覧表
を掲載し、それから各大学へリンク(日本の大学も含まれる)している。これから、各教
育機関でのコースシラバス(講義内容)や研究内容を知ることができる。また、CG分野
で博士号を取得した人のリストや、CGに関する文献検索も提供してくれている。さらに
、SIGGRAPHで発売している教育用スライドセットも見られる(これでは購入する必要はな
くなるのでは)。
CGのカリキュラムのみでなく、講義で使用するスライド、板書のハードコピー、ハン
ドアウト(配付資料)、宿題をページ上に置いている大学もあり、教育方法の参考になる
。また、学生の作品(画像も含む)を紹介しているページもある。レイトレーシングのみ
でなくラジオシティを考慮した作品まで学生が作成しているものには驚かされる。
SoftImage,Wavefrontなどの商用ソフトやPovray(レイトレーシング), Radiance (ラジオシティ関係)を実習に使う例もある。作品のコンテス
トを行い、優勝者にはSIGGRAPHへの費用を負担している大学もある。
CGを勉強
したい人は、これらのページを有効利用すれば、コースを取らなくても十分勉強できるの
ではなかろうか。なお、スタンフォード大学、カーネギーメロン大学、カリフオルニア工科大学などが充実しているから参照されたい。
CG検定(CGARTS)のための過去の問題(教科書も)を紹介し、さらにオンラインで解
答したものを採点してくれるサービスをしている(埼玉大学の協力)。
研究動向について
各研究機関のこれまでの研究内容や研究動向を知ることができる。
特にCG分野では画像が掲示されていることが、WWWのメリットといえる。
学会に参加しなくても、あるいは学会開催前に発表論文名やその論文中の画像を入手で
きる。SIGGGRAPHやEUROGRAPHICSにおいては、論文委員会が開催された直後に、受
理された論文名を含むプログラムが公表された。従来はアドバンスプログラムが配布され
るまで、全容はわからなかった。論文がアクセプトされた時点で、論文概要や画像をホームペー
ジ上で公開する研究者がある。これにより、学会開催の前に、発表者がわかるので、その
ホームページ上で論文を入手できる。未発表のものも含み論文をホームページ上において
いる研究者が多く、既発表の論文に限らずこれから発表する内容もわかる。著者の場合で
も、学会発表以前に問い合わせがあり、ホームページ上の論文を提供した(先方から連絡があ
った)ケースもある。
現在研究中のプロジェクトを公開してる研究機関が多く、研究テーマが競合しているか
否かを知ることができる。著者の発表予定論文と類似した研究の進捗状況を紹介して
いるページもあり、同じ研究テーマを考えている研究者の存在に驚いたこともある。また、著者
の論文を改良あるいは参考にした論文や応用した画像を紹介したページの存在にも驚かさ
れる。
リソースの利用
形状モデル、テクスチャ、および人体のボクセルデータ等を入手できる(有料のものあ
る)。データ形式の変換ソフト等も入手可能なので、データは有効に利用できる。
レイトレーシングのソフト(POV-RAY )、ラジオシティのソフト(RADIANCE)、ビジュアラ
イゼーション、モーフィングなどのフリーソフトも入手可能である。 PovRayに関しては、色々
のユーザが追加、改良(インプリシット曲面等)して配布している。著者の発表論文を参
考に機能(光の散乱効果)を追加したPovRayの改良版もある。
Academic Press社の本「Graphics Gems」(現在5巻まで)はCGに関する多くのプログ
ラム(ソースコード)を掲載し、フロッピー付きで販売している。図形の基本的処理から、レイトレーシン
グ(最小の行数のレイトレーシングプログラムも興味深い)、ラジオシティまでかなりの
数のプログラムが紹介されているが、それらを入手できるサイトもある。
最近Java に注目されているが、Javaアプレットのソースコードを公開しているものが多い
ので参考になる。
ギャラリ
大学あるいは企業の研究機関、CG関連会社、個人(研究者、アーチスト)、SoftImageなどの商用ソフトやPovrayなどのフリーソフトのユーザの作品集など様々 な形態でのギャ
ラリがあり、楽しむことができる。
筆者の場合は、SIGGRAPHの論文等に掲載した150枚以上の画像をホームページからリンクしている。
CG関連のリンクサイト
CGに関連するURLを集めたサイトが幾つかある。世界のCGの主要な研究機関(ただし、日本の機関はない)を集めたサイト(CG World)がある。Tom Beach(学生)が作成してものやNan教授が作成したサイトが有用である。日本では埼玉大学の 知識講座研究室作成(近藤先生)のものがある。この中には、筆者が集めたものにさらに解説を追加したものもあり、是非参照されたい。
ここでは、日本のCG関連の大学、会社をかなり網羅してある。
本年のSIGGRAPHでは、有用なCG関連のURLを紹介するチュートリアルコースもあった。また、CGInternationalの学会においても、VRに関するURLを紹介する発表があった。このようにURLを調査することもある種の研究といえるし、他の研究者らへの貢献度が高い。
学会関連
CG関連の学会はWWWの利用はいうまでもなく進んでいる。
学会の開催日程、プログラム、申し込み、会場地図の情報を入手可能である。
例えば、SIGGRAPH、EUROGRAPHICS, Pacific Graphicsなどの国際会議や、情報処理学会グラフクスとCAD研究会、画像電子学会のVusual Computingなどの国内の学会の開催日程の公開などのように一般化してきた。
SIGGRAPHの発表論文はCD-ROM化されが、それを講義で利用している例もある。あ
るテーマに関連した論文を集め、その著者、論文にリンクし、また,論文中の画像をページ上におい
ている(筆者のSIGGRAPHの発表論文の
画像もそれに使われていた)。
IEEEにおいて、最近"Visualization and Computer Graphics" が刊行された。この学会誌においては、採択論文の概要がホームページ上で速報されている。
1997年からは、SIGGRAPH, EUROGRAPHICS共に論文をインターネットを通して投稿できるようになったのも(HTML形式やPOstScript形式)、研究者(特に海外)には嬉しい知らせである。すなわち、遠隔地の人も締切の直前まで研究ができるようになる。
その他
研究者の所属機関(特に移動)を察知しやすい。米国では移動が頻繁である。プリンストン大のP. HanrahanやM. Cohenらの移籍などもWWWで容易に知ることできた。J. KajiyaがMicroSoftに移籍した後、それに続き何人かの研究者(A.Glassner, J.Blinn, M.Cohen, A. R. Smithなど)が移籍したのをWWWで早く知ることができたのも興味深い。
WWWではないが、NiftyのLW&VT Stationフォーラム(SLWAVE)は、商用CGソフトLig
htWave3Dのユーザのためのものであるが、ここではCG画像の作成について議論されいる
。また、画像もダウンロード可能である。印象深いものとしては、SIGGRAPHやNICOGRAPH
に出品したいという意見交換や、NICOGRAPHの会場(展示)の印象が議論されていた。ま
た、幾つかの自作のアニメーションの回覧も行われている。
おわりに
WWWを利用することにより、CGの在宅学習が可能な時代になったと言える。特に米国の先端的な大学
がその講義の日程、内容、講義で使うスライド、ソフトウエア、配布資料などを公開しているので、これらを
有効利用すれば、遠隔学習が実現できる。筆者の経験では、まだ17才のスペイン人から、筆者のホームページからいくつかの論文を自宅からダウンロードしたというメールが来たのには驚かされた。まだ大学での講義を受けてない年齢の学生(?)が、先端的な論文を読んでいるのである。まさに在宅学習をしていると想像される。
なお、WWWの利用はオンラインで処理できるメリットがあるが、半面リンク先が移動・消去されるのが
問題である。特に、大学での講義は前期、後期で異なるので、その都度変更消去されることが多く、リンク先のメンテナンスも大変な作業である。