10.5.1 画像の平滑化
雑音などのためにざらついた感じを与える画像の濃淡を平滑化することで見やすくする処理である。
(1) 移動平均フィルタリング
濃淡レベルの移動平均を求める処理である。注目画素の濃淡レベルをその画素を中心とした局所領域(3×3画素の矩形領域など)における濃淡レベルの平均値で置き換える処理を、すべての画素に対して行う。たとえば、3×3画素領域の各点の濃淡を均等に加算して、9で割って平均を求める。あるいは、注目する画素に近いほど重みを大きくして加算する方法もある。局所領域の大きさが大きいほどより強く平滑化される。図10.5に平滑化による雑音除去例((b)が処理後)を示す。
(a) 入力画像 (b) 平滑化による雑音除去例
図10.5: フィルタリング
(2) メディアン(median)フィルタリング
移動平均フィルタリングでは注目画素の濃淡レベルを局所領域の濃淡レベルの平均値で置き換えるが、そのかわりに中央値(メディアン)で置き換える方法である。中央値とは、その値以下の濃淡レベルを示す画素の数と、その値以上の濃淡レベルを示す画素の数とが等しくなる濃淡レベルを意味する。(図\ref{fig:fig10-11})。
(3) 低域強調フィルタリング
ざらついた感じを与える画像は、一般に高い空間周波数の成分が大きくなっていることに注目し、高い周波数の成分を小さくすることで相対的に低い空間周波数成分を強調する方法である。画像の空間周波数成分は、画像をフーリエ変換することによって得られる。フーリエ変換後、高い周波数の成分をより小さくし、逆フーリエ変換することによって平滑化された画像が得られる。
10.5.2 画像の尖鋭化
ぼけのある画像をより鮮明にする処理である。2次微分を利用した尖鋭化フィルタリングと、フーリエ変換を利用した高域強調フィルタリングなどの方法がある。
(1) 微分フィルタリング
前述の雑音除去は一種の積分操作で実現されたが、画像の尖鋭化は微分操作を施す。 もっとも簡単なフイルタは、水平。垂直方向の差分の2乗和の平方根を注目する画素の値とする方法である。図10.6に微分フイルタの処理例を示す。
\begin{figure}[htbp] \vspace*{4.5cm} \caption{微分フィルタリング} \label{fig:bibun} \end{figure}
(2) 2次微分を用いた尖鋭化フィルタリング
原画像の濃淡レベルから画像の2次微分(ラプラシアン)の値を差し引く処理である。
濃淡が図\ref{fig:fig2-8}(a)のように緩やかに変化しているデータの2次微分は(c)のようになるが、原データ(a)から(c)を引くと(d)のような結果が得られる。また、(a)と(c)を比べると濃淡変化の度合いを示す傾斜がより大きくなっていると同時に、原データにはなかったくぼみとこぶが発生していることがわかる。これらの効果で濃淡が変化している部分(エッジや線)がよりくっきりとし、画像はより鮮明に見えるようになる。
(3) 高域強調フィルタリング
濃淡の変化が緩やかな画像はぼけたように見えるが、そのような画像の空間周波数分布をみると、一般に高い周波数の成分が小さくなっている。そこで、低い周波数成分を小さくすることで相対的に高い空間周波数成分を強調することによって 尖鋭化を図る方法である。画像の空間周波数成分は、画像をフーリエ変換することによって得られる。フーリエ変換後、低い周波数の成分をより小さくし、逆フーリエ変換することによって尖鋭化された画像が得られる。
|