|目次 または フレームありの目次|



 陰影付けの処理はシェーディングモデルとよばれる。陰影表示には、光の当り具合いによって、色調が変化する状態を表示するいわゆるシェーディング(shading)と、光が遮られて生じる影の表示法(shadowing)があり、また被照体の光学的特性に依存して生じる様々な現象や、遠近感の表示法等多くの手法が開発されている。

5.1 シェーディングモデルの多様性
 物体の形状の把握が主目的の機械用CADでは、影がなくても十分なことが多い。一方、建築、照明設計等に用いる写実的な画像の生成には、できるだけ厳密な光と影のシミュレーションが必要である。
図5.1
図5.1:シェーディングモデルの要素

 図5.1に示すようにシェーディングモデルを構成する要素は、物体を照射する光源の種類およびそれらの特性、物体を照射する光(直射光と間接光)の種類、さらに、反射・透過・屈折等の物体の性質である。
 精密な物理法則に従うほど、写実的な画像を創成できるが、それだけ高速、大容量の計算機を必要とする。したがって、どのような物理モデルを採用するかは、その用途に依存する。

図5.2

図5.2: 多面体光源に対する表示例

 光のシミュレーションをとってみても、1960年代後半から70年代を通じての、平行光線と点光源による簡単な陰影表示技法の基礎開発段階から、1980年代に入って、各種の配光特性をもった点光源をはじめ、線光源で表した蛍光灯、面光源による埋め込みパネル、多面体光源に対する表示法が開発されるようになった (左図参照)。

 80年代後半早々には、それまでの一様の明るさの環境光から、壁等からの相互反射を考慮した、より精密な環境光による屋内照明の計算法が発表され、世間の注目を集めた(1985年)。

 最近では、この相互反射の計算をハードウェア化したワークステーションも開発された。さらに、屋外の景観をよりリアルに表現することによる環境シミュレーションには天空光が有効である。天候状態を考慮した夕焼けの情景や、雲や霧、霞など、大気中の粒子による光の散乱・吸収効果のリアルな表現が可能になった。



前のページへ

次のページへ