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6.2 基本的な考え方

 画素は基本的には正方形(または円)と考えることができる。一般にエリアシングは図形のサンプリングに起因して生じるものであり、この問題の解決の基本的な考え方は次のようである。

 (a) 図形を画素内に占める領域の面積に比例した輝度を与えることにより解決する。

 (b) 画素内にサブピクセルを発生し、各サブピクセルにおける輝度を平均または加重平均することにより画素の輝度(または色)を決める。

 (c) 実際の表示装置よりも高解像度の画像を計算しておき、数画素分(例えば、3×3、表6.1参照)を平均または、表の係数を用いて加重平均して、実際のスクリーン1画素の色とする(フィルタリングと呼ばれる)。

表6.1: フィルタリングの重み係数

 隠面消去にはスキャンライン法、レイトレーシング法、Z-バッファ法等があるが(第4.3章参照)、これらの方法によりそれぞれアンチ・エリアシングの方法は異なってくる。なお、Z-バッファ法は一般にややその処理が困難とされている。


6.3 レイトレーシングに適したアンチエリアシング

 レイトレーシング法は、基本的にポイント・サンプリングであるから、サンプリング点数を増加させることが解決策である。このように1画素内のサンプリングを増加することをスーパーサンプリングという。しかし、例えばサンプリング点を1画素当り3×3点でサンプリングすれば、当然時間は9倍要し、良い方法とは言えない。そのため種々の効率的な方法が開発されており、その幾つかを説明する。

(1) アダプティブ・スーパーサンプリング

 この方法では、まず図6.4に示すように、画素の4隅と画素の中心でサンプリングする。

図6.4
図6.4:アダプティブサンプリングによるアンチエリアシング

 ここで、4隅の点は隣接する画素で共有しているので、サンプリング数はそんなに増加しない。その後、4隅の点の輝度と中心点の輝度を比較する。もし、右隅の点と中心点との輝度差があれば、右隅の四分の一領域に細分割し、その領域の中心点でサンンプリングする。この領域の4隅の点と中心での輝度から先ほど同じ様に輝度差のある領域を細分する。ある設定回数までこの細分を繰り返す。なお、輝度差がない場合は、当然、分割の必要はない。分割されない画素の輝度は、4隅の輝度の平均値が用いられる。この方法は輝度差がある画素についてのみ、図形の複雑さに応じて分割されるから、アダプティブ・サンプリングといわれる。

(2) 分配レイトレーシング

 トカスティック・サンプリングとも呼ばれ、クック(Cook)らにより開発された。一般のレイトレーシングにおいては、レイは格子状に配置された画素の中心に向かう方向に発生されるから、規則的な配置となる。この規則性がエリアシングの原因になっている。従って、画素の領域内において、レイの発生位置を乱数で移動させてやることによって、エリアシングを減少させることができる。厳密にはレイの発生点および個数は統計的な方法で制御されるが、簡易な方法では次のようにする。例えば、4×4のグリッド(サブピクセル)を発生し、その点を中心に乱数によりレイを移動させる。このようにずらせる方法をジッタリングという。なお、前述の方法と同様にアダプティブなサンプリングによりサンプリング数の効率化を計ることもされている。この方法は、エリアシングだけでなく、モーションブラー、焦点深度の表現、半影(かすんだ影)の表示、大きさを持つ光源の処理にも利用できる方法である。


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